さてさて

生きてると年をとるんです

尾長が家にやって来た

梅雨のさ中、暖かな雨がうっとうしい昼下がり


窓のそばに置いた自転車から何か動く気配がしました。


窓側まで行って確めて驚きました、見たことの無い鳥が一羽サドルの上に停まっていたのです。


鳩くらいでしょうか…


網戸越しにこちらをうかがっていて、わたしの姿を見ても全く逃げようともしません。


試しに網戸を開けたら 何と!家の中へ入ってきました。


縁側と部屋の仕切りに使っている衝立の上に陣取り、くつろいでいます。


怯えたり、飛び回ったり、泣き声を上げたりも一切無しでした。


念のために言いますが、その鳥とは初対面、ペットショップですら見かけたことがありません。


衝立の上にいて、とても大人しくゆったりしていたので、丁寧に念入りに拝見しました。


後で、尾長 という名前が分かってから、ずいぶんあちこちの写真を見ましたが、私が見たような愛らしい姿は一枚も見付けられません。


顔や体にくっ付くぐらい超至近距離で見た 尾長は


品格のある美しい三色の羽毛、丸みを帯びた愛らしい胴体、漆黒のヘルメットを被ったかのような頭部、その中に光る黒いビーズのような眼。


何て美しいのか…


言葉を失うほどでした。


野生の鳥なのに、どういうはずみか我が家に雨宿りの軒を借り、お礼に その姿をたっぷり披露してくれた 尾長さん


雨が上がり、窓を開けて飛び立ちを促しても、名残惜しそうに見えたのは、気のせいでは無かったと思いたい。


外に出てからも、すぐには居なくならず、塀の上からこっちを見てくれていた。


あの鳥は、誰かだったのかな?


私に会いに来てくれた誰かだったのかな?


わたしを心配した誰か…


鳥の姿になって来てくれたとしたら、あの世からかな


この世には、居ないから…多分


もう10年にもなる、少し古い話

×

非ログインユーザーとして返信する